恩田陸の原作小説がかなり好きなので観よう観ようとずっと思ってた映画、『蜜蜂と遠雷』をやっと映画館で観てきた。
率直な感想としてはすごく上手に映画として成立させていて良かった。
あ、これから書く内容は若干ネタバレの部分もあるので、まだ観てない人は注意を。
ということでまず予告編。
映画『蜜蜂と遠雷』
2019年10月4日(金)ロードショー松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン
鈴鹿央士(新人) 臼田あさ美 ブルゾンちえみ 福島リラ / 眞島秀和 片桐はいり 光石 研
平田 満 アンジェイ・ヒラ 斉藤由貴 鹿賀丈史原作:恩田 陸「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎文庫)
監督・脚本・編集:石川 慶
「春と修羅」作曲:藤倉 大 ピアノ演奏:河村尚子 福間洸太朗 金子三勇士 藤田真央 オーケストラ演奏:東京フィルハーモニー交響楽団(指揮:円光寺雅彦)©2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
mitsubachi-enrai-movie.jpThis domain may be for sale!
あの小説をどのように映画というメディアに落とし込むんだろうというのが観る前の僕の一番の興味だったんだけど、芳ヶ江国際ピアノコンクール本戦と各登場人物を描くのに最低限必要なエピソードを軸に据え、それ以外の原作で描かれた細かな要素をバッサリと切り捨て、なおかつ一部の登場人物の役割を組み替えることによって非常にシンプルな構造にし、2時間でおさまるドキュメンタリータッチの「映画版」という作品に仕上げた監督の再構築の手腕がすごくセンス良く、説明不足と感じる人は多いかも知れないけど、素晴らしいものだったと思う。
また演出面にしても説明台詞を避け極力役者さんの表情と仕草と居住まいで表現し、どうしても物語上必要な説明をブルゾンちえみ演じるところの仁科雅美と鹿賀丈史演じるところの小野寺昌幸に喋らせるということも、多少その二人をうざったく感じてしまう面もあるけれど、トータルで見たら成功していたんじゃないかなと感じた。
それとなにより映像と音響が全編にわたって美しく、観客を作品に引き込むための大きな要素となっていた。
なんてほとんど褒めるばかりなんだけど、個人的に気になった点がないわけではない。
まず一つ目が「馬」の扱い方。
存在感がありすぎなんじゃないかなと思うし、栄伝亜夜の「雨だれ」からもっと滑らかに「馬」が連想されるともっと良いんじゃないかなあと思ったんだけど、どうなんだろう。彼女の強烈な才能のモチーフとして考えればあれで良いような気もするし、異物感を感じさせるのは成功だと思わないでもないんだけど、うーん、やっぱりもうちょっとスマートに「馬」と本編が繋がると良いんじゃないかなあ。
それともう一つ、栄伝亜夜が「覚醒」に向かう道程がもっと見えた方が良かったんじゃないかあと思ったりもする。
いや、クライマックスで落差をはっきり出して劇的に、というのはわかりやすいし、シンプルで良いなとも思うんだけど、若干唐突な印象を受けたのも事実で、その前段階から「覚醒」の片鱗を見せといた方が、彼女が舞台袖に現れたときに観客の「うん知ってる」っていう満足感を刺激できるからむしろ劇的に感じさせられるなじゃないかなと思った。うーん、でもこれは劇作上の好みの問題かなあ、うーん、難しい。
最後にもう一つ、片桐はいりさんの使い方。
ちょっとやりすぎかなあ。いや存在感があるしアクセントとしてわかりやすいんだけど、そういう記号的な扱い方はもういいじゃんって思っちゃった。違う役者さんでも同じことを成立させられるかな、と。
結局僕が気になった点は、そういう演出で実際にやってみないとわからないし、いろいろ試した上でああなってたような気もするのでなんとも判断しかねる部分でもある。
あー、あと風間塵と栄伝亜夜の連弾のシーン、もうちょっとエロティックに見える方が好みだったかも。
でももう一度見直したらこれはこれで良いのかな。
うーん、やっぱり難しい。
まあ、なにはともあれ、主役4人はもちろん、出演者の演技も良かったし、抑制の効いたストイックな語り口がすごく好きな作品でした。
やっぱプロコフィエフのピアノ協奏曲は格好良いよね。3番もだけど予告編で使われてる2番も格好良い。
コメント