NODA・MAP『Q』

NODA・MAP『Q A Night At The Kabuki』北九州芸術劇場で11月3日に観てきた。
昨年観た『贋作 桜の森の満開の下』が個人的には(学生時代に観て以来、未だに頭の中に強烈に残っている夢の遊眠社版の印象が強すぎたおかげで)いまいちだったのであまり期待しないで観に行ったんだけど今回は良かった。

NODA・MAP第23回公演
『Q:A Night At The Kabuki』
Inspired by A Night At The Opera
作・演出 野田秀樹 音楽 QUEEN

東京公演 2019年10月8日(火)-10月15日(火) 東京芸術劇場プレイハウス
大阪公演 2019年10月19日(土)-10月27日(日) 新歌舞伎座
北九州公演 2019年10月31日(木)-11月4日(月・休) 北九州芸術劇場 大ホール
東京公演 2019年11月9日(土)-12月11日(水) 東京芸術劇場プレイハウス

<CAST>
松たか子 上川隆也
広瀬すず 志尊淳
橋本さとし 小松和重 伊勢佳世 羽野晶紀
野田秀樹 竹中直人

秋山遊楽 石川詩織 浦彩恵子 織田圭祐 上村聡 川原田樹 木山廉彬 河内大和 末冨真由
鈴木悠華 谷村実紀 松本誠 的場祐太 モーガン茉愛羅 柳生拓哉 八幡みゆき 吉田朋弘 六川裕史

<STAFF>
美術 堀尾幸男
照明 服部基
衣裳 ひびのこづえ
美粧 柘植伊佐夫
サウンドデザイン 原摩利彦
音響 藤本純子
振付 井手茂太
舞台監督 瀬﨑将孝

企画・製作
NODA・MAP / (株)ソニー・ミュージックエンターテインメント / (株)ソニー・ミュージックパブリッシング

今回の『Q』は最近の野田戯曲の中ではわりとシンプルな構成だったように感じたんだけど、それでもこれまでの野田作品のように重層的な意味の広がりと、それを演劇というメディアでしか表現できないものに昇華した演出が本当に素晴らしい。
特に戯曲は『ロミオとジュリエット』を源平合戦に置き換え、源氏と平家、未来と過去、有名性と匿名性、などなどの二項対立を軸にして、それを二人一役で演じる組と一人複数役で演じる組が入り乱れ、シェイクスピア戯曲やその他古典などからの引用が絡み合い、源平合戦の時代から第二次世界大戦とその後数十年までの時間軸を描いていて、それに触れるだけでもイマジネーションが刺激されて心地良い。

そしてそれらの複雑な要素を演じる役者さん達も素晴らしかった。
特に若い主役二人、広瀬すずと志尊淳は若さと初々しさを持ち合わせているというだけですでにロミオとジュリエットとして舞台上に存在していたと思うし、また同じ役を演じるもうひと組、松たか子と上川隆也の二人は肩の力が抜けつつもベテランらしい落ち着きと要点をしっかり押さえる演技で舞台を引き締めていた。特に松たか子はこれまでに彼女が出演した野田作品の中で一番はまっていたんじゃないかと思う。
また脇を固める他の出演陣、というか脇役という言葉よりも数段存在感のある役者さんばかりだったんだけど、彼らも本当に素晴らしい。
特に個人的には橋本さとしと羽野晶紀という元劇団☆新感線の二人を久々に舞台で観られて嬉しかった。
羽野晶紀は21年ぶりの野田地図ということらしいんだけど、考えてみれば僕が彼女の出演舞台を最後に観たのも21年前の野田地図だったりするので感慨が深かった。
橋本さとしは相変わらずデカくて良い声で、もうそれだけでお金を払う価値があるような気がする。もう一度『野獣郎見参』の彼を観たいなあと思ったりした。
もちろん他の役者さん方、小松和重、伊勢佳世、竹中直人も流石という演技だった。

それと今回の『Q』の重要な要素、QUEENの楽曲の使い方についてなんだけど、思ったよりもガンガン鳴らさずに要所要所に配置する使い方はセンス良いなと感じた。
特に全曲をベッタリ使うのではなく、時にはギターパートだけを聞かせたり、あるいはAメロ終わるまで動きだけのシーンにしたりという見せ方聞かせ方は上手いって思ったし、楽曲の歌詞の内容と舞台上で繰り広げられるシーンとの距離感が絶妙で、フレディの声が時には美しく、時には残酷に響いてきて、舞台上の情報量を増やすことに大きな貢献をしていたんじゃないかと思う。

また最近の野田地図の作品の中ではかなりスッキリ軽やかに観られる内容なのも個人的には良かった点だったりする。

あ、あともう一つ最後に、まさかあんなに自撮り棒が活躍するとは思わなかった。
最初あれが出てきた時に「しょうもないなあ」なんて思ったことを深く反省した。

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