もしあなたがバレエ教室の発表会の写真撮影を頼まれたら

もう4年ほど前のことですが……。

えーと、僕の友達がバレエ教室を開きまして、ある程度生徒さんも増えて初めての教室の発表回をやることになったんです。
ただしなにぶん初めてのことだし教室が始まってまだ2年ほどしか経ってない、ということでお金があんまりない。で、友達のよしみということで僕に「本番の写真を撮ってくれないか?」と頼まれまして、気軽に「いいよ」と引き受けたんです。
で、それから打ち合わせなんかするうちに、どうやら普通のバレエの発表会というのはいわゆる業者さんのカメラマンが入って撮影してそれを後日1枚いくらかで生徒さんに販売するというのが一般的でその教室でも同じような感じにしたい、となってしまいまして、非常に困ったわけです。

僕は仕事柄写真を撮らなきゃならないこともあるし、そのために一眼レフのデジカメは持ってるんだけど、それはあくまでクライアントさんの予算の都合でカメラマンを雇えない場合にって時で、「予算ないんだから文句言うなよ」と逃げられるところがあったのでわりと気軽に撮ってたんですね。

だけど生徒さんに本番の写真を売るとなると気軽には撮れないわけです。
僕にとっては何度もある撮影仕事の一つだけど、生徒さんにとってはもしかすると一生に一度の発表会になるかもしれないし、別の考え方をするとある生徒さんがその年齢でバレエを踊ってる唯一の写真を僕が撮らなきゃならないかもしれない、とも思ったわけです。

それで非常に慌てまして、とはいえ写真の腕が急に上達するわけなんてないんだけど、最低限「いいね」と思ってもらえる写真を1枚でも多く撮れるようにするにはどうすれば良いのかを考えたわけです。

a backstage 2010

前置きが長くなってしまったけど、この記事はその時の試行錯誤の結果の記録であり、同じような立場の人がこれから出てきたときの助けになれば、あるいは自分の娘のバレエの晴れ姿を撮りたいお父さん方の助けになれば、という記事です。

準備 – 機材編

まず当たり前ですが一眼レフのデジカメを用意しましょう。

センサーサイズですがAPS-Cで充分だと思います。
なぜならバレエの発表会の撮影というのは舞台かぶりつきで撮影できることなんてほとんどなくて、他のお客さんの邪魔にならない後ろの方の席だったり、あるいは最後列の通路からの撮影になることが多いので焦点距離を稼げる分だけフルサイズよりもAPS-Cの方が便利だと思います。
あ、もしあなたがカメラとレンズにお金をじゃぶじゃぶ使える人ならフルサイズ機でも問題ないと思います。

個人的にはミラーレス一眼よりは普通の大きい一眼にした方が良いと思います。
これは慣れかもしれませんが、ミラーレス一眼で液晶モニタを見ながら被写体を追って撮影するよりも、片眼でファインダーを覗いて被写体を追いつつ、時折もう一方の片眼で舞台全体の把握をする方が視線移動が少ない分シャッターチャンスを逃す確率を下げることができると思うからです。

それとカメラのISOが3200以上あった方が良いかなと思います。
意外と本番の舞台というのは暗いのです。その上出演者は激しく動きまくるわけですからシャッター速度を稼ぐためにもISO3200以上あった方が失敗が少ないと思います。

次にレンズについて。

本番が行われる会場の舞台の広さと撮影ポイントからの距離によって使うレンズの焦点距離を選びましょう。
事前に会場で確認できれば一番ですが、なかなかそうはいかないことが多いと思います。
ちなみに僕の場合は「50mm」「18-125mm」「70-300mm」の3本を用意して会場の様子を見ながら使い分けています。
それとできるだけシャッター速度を稼ぐためにF値の少ない明るいレンズがあった方が望ましいと思います。解放F2.8があれば安心ですが、予算の都合もあるので「可能な限り」で、ついでに手ぶれ補正機能は必須だと思います。

ということを踏まえて一応現行機種でお勧めを下に。これくらいのモデルだと安心ですねって感じで、EOS KissでもISO3200以上で明るいレンズがあれば大丈夫だと思います。
あ、僕はキヤノンユーザーなので他のメーカーのモデルはよくわかりません。ごめんなさい。

あ、そうだ、メモリーカードはなるべく大容量の書き込み速度の速いものを選びましょう!
これ大事!

準備 – その他もろもろ編

当たり前ですが必ず事前に主催者と打ち合わせをして撮影の許可を得ましょう。

特に自分の娘の晴れ姿を撮りたいと思っているお父さんお母さん方、教室の方針にもよりますが、基本的に本番は許可のない撮影は禁止になっています。無許可で撮影しようとすると追い出されたりデータを消されることもありますから、必ず事前に先生と相談して許可を得るようにしてください。そして撮影可能な場所と時間(例えば昼間の公演の最後列からなら許可等)をしっかり把握しましょう。
教室からオフィシャルに頼まれた場合はわざわざここで書くような注意点というのはないと思いますが、あえて書くなら写真の納品手段や納期などの打ち合わせはしっかりやっておくべきだと思います。

撮影の許可が下りたら、舞台の進行や流れ(どちらの袖から登場するのか、見せ場はどこか等)をしっかり頭に入れておきましょう。
可能なら通し稽古なども許可をもらって撮影すると良いと思います。
本番の晴れやかな姿も良いですが、レッスン中に先生と真剣に向き合っている姿だったり怒られてる姿だったり褒められてニコニコしている姿も被写体として魅力的だと思いますしね。

それと、撮影本番前にしっかり機材になれておきましょう!
いざという時に使い方がわからなかったら貴重なシャッターチャンスを逃してしまいます。しっかり撮影の基礎知識を頭に入れ、試し撮りをたくさんしておきましょう!

撮影編

さあ撮影本番。

手持ちで撮影か三脚を使うかは会場の撮影ポイントだったり主催者の方針だったりの状況によって変わると思います。なのでここでは触れません。
大事なことはフラッシュは絶対に禁止ということ。見せ場でフラッシュをたくとせっかくの照明効果が半減して舞台が台無しなんてことになるので絶対にフラッシュはオフにしておきましょう。
それと記録はRAWで。

本番の舞台というのは照明の状態にもよりますが、明暗差が非常に激しいのでなかなか露出の設定が難しいです。
そして動きの激しいシーンなどは被写体ブレが起こりやすいので気をつけながら撮影ということになります。

上に書いたようなことを踏まえると、シャッター速度は最低でも1/125、できるだけ1/250以上、露出はスポット測光で出演者の顔や衣装が白とびを起こさないように気をつけながらの撮影、となります。
一番良いのは全てマニュアル撮影ですが、慣れないと難しいと思いますので、シャッター速度優先で1/250、スポット測光で露出補正を-1、ISOはオート(あるいは3200固定)を基本にして、あとは舞台構成や見せ場に合わせて設定を変えながら撮影、というのが一番失敗が少ない設定かなと思います。

KDP2013

あとは枚数をひたすら撮る!
腕に自信がなくても枚数をこなせば何とかなります!
ジャンプしたら撮る、ポーズをつけたら撮る、笑ったら撮る、揃ったら撮る!
日の丸構図でも何でも良いのでとにかく舞台で起こっていることをすべてフレームに入れることが大事だと思います。
細かいことは家に帰ってからRAW現像の段階でどうにかしましょう(笑)。

あ、そだ、個人的には連写モードは使わずに一枚一枚シャッターを押す方が失敗が少ないんじゃないかと思いますが、そこは自分の腕と相談で。
ただし、見せ場が続くシーンなどは連写モードを使いすぎるとメモリーカードへの書き込み待ちが発生してシャッターチャンスを逃すなんて事になりかねないので、舞台の進行に合わせて計画的にシャッターを押しましょう。

これで舞台撮影はある程度できたんじゃないかと思います。

個人的にはついでに出演者や先生方のオフショットも撮影しておくと、より喜ばれるんじゃないかと思います。
例えば、本番前に最後のストレッチをしている真剣な姿とか、生徒達が頑張ってる姿を見つめる先生の眼差しとか、本番前のゲネプロの舞台袖で張り詰めている出演者とか、本番が終わって安心した顔で楽屋に帰る姿とか、そこら中に素晴らしいシャッターチャンスが転がっているので、それを逃さずカメラマンの本能にしたがって撮影しまくりましょう!

これを読んだ皆さんの検討を祈ります!

a backstage 2014

追記:
あなたが大量に撮影した写真をプリントしたくなったら」という記事を書きました。
合わせてどうぞ。

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