これ出版されて10年経っているので城好きなら一度は目にしたことがあるだろうし、持っている人もたくさんいるんじゃないかと思うし、かく言う僕も発売後すぐに購入してそれからずっと本棚の良い位置に置き続けているんだけど、この書籍について他のブログなり何なりに一度も書いたことがなかったことに気付いたので、書いておこうかな、と。
この書籍では、城地の定め方から堀、石垣、そして天守(よく使われる「天守閣」という言葉は間違い、正しくは「天守」)、櫓、城門、果ては城下町まで微に入り細に入りその機構や建築の意味・分類・歴史などを解説している。
この解説が本当に詳しい。
図解や写真などをたくさん使って細かな知識を非常に理解しやすく解説しているので、一通り読むだけで城郭建築、あるいは城郭に利用されている日本建築の膨大な知識が頭に入ってくる。
例えば石垣ひとつを題材にとっても、石の加工の仕方の種類、石の運搬方法、その積み方の種類、構造、築造年代の見分け方、勾配のつけ方、石垣の表面仕上げの方法など「これでもか」とたくさんの解説がなされるわけで、これで得られた知識を持って実際の城の石垣を見るとそれまでとはずいぶん違った見え方になること請け合い。
実際の僕の経験だと、とある城を訪れて、同じ城内でも石垣が作られた年代がずいぶん違うことに気付いたり、築城当時そのままの石垣と、後の城主の時代に拡張された部分があることに気付いたり、明治以降に積み直しされた石垣を発見したり、と、この書籍によって得られた知識のおかげでそれまでの何倍・何十倍も豊かな眼差しを持ってその城を見つめることができたわけである。
もちろん、石垣だけでなく建築物や城の立地、城下町なんかも含めて、そこにある膨大な情報と歴史のドラマを感じるわけで、「どうして城郭研究者にならなかったんだろう」と悔しい気持ちが湧くほどにひとつの城だけで楽しめるのだ。
本当に、知識と知性が人生を豊かにするという実例を得られるのがこの書籍の素晴らしいところだと思う。
「城のつくり方辞典」と銘打っている書籍だけど、実際は「城を見つめる豊かな眼差しのつくり方辞典」だな、というのが僕の結論。
城についてちょっとでも「好き」と思ったことがある人、日本建築が好きな人なら買って損はないし、一生の宝物になるかもしれない書籍、是非!
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