一生に一度は読んでおくべき、半藤一利著『決定版 日本のいちばん長い日』

この夏に『シン・ゴジラ』を観て、それはそれで書きたいことがたくさんある映画だったんだけど、まあとにかく、その影響でかつてのゴジラシリーズの映画をもう一度見直したくなったり、あるいは『シン・ゴジラ』の映画表現の元ネタとも言うべき岡本喜八監督『日本のいちばん長い日』を見直したくなったりっていう気持ちが起こったりした中で、「そういえば映画の『日本のいちばん長い日』は学生の頃に観たけど原作を読んだことがないな」ってことに気がついて、急いで買いに行って読んでみた。

「もっと早く読んでおけば良かった」というのが最初の感想。

内容は、当時の日本政府が御前会議において降伏を決定した1945年8月14日の正午から翌8月15日正午の玉音放送までの24時間を緻密な取材と詳細な記述で描いたノンフィクション作品。
すごーく平たい言い方をすれば一度始めた事業をやめる大変さと、「玉」を取ったものが勝つという日本古来から続く権力掌握の大騒動を追いかけた作品とも言えるような気もする。まあ乱暴で品がなさすぎる表現だけど。

ここに登場する大勢の政府関係者はそれぞれに正義があり、また忠誠心があり、立場があって、そこから見える最大限の「良い結果」に向けて命を賭して行動する、そしてそれぞれの「命」の向こう側には当時の日本国民の「命」も見えてくるわけで、真剣であり、情熱的であり、彼らの悩む姿や行動には心を動かされるし、彼らを決して軽んじてはいけない、という気持ちが湧き起こる。

また昭和天皇の「聖断」に至るプロセスやそれを受けた政府関係者の反応・行動、「玉音放送」に向けた動き、宮城事件など、ここに書かれていることが現時点で最大限に判明している事実だけに、読みながらそれらのことの圧力や迫力を感じてしまい圧倒された。
もし自分があの時代のあの場所にいたらどうなっていたんだろうと考えてみたものの、きっと右往左往するだけで何の役にも立たない存在にしかなれないだろうとため息をついてしまう。

そして偶然にも当時の昭和天皇といまの僕はちょうど年齢が同じであるだけに、昭和天皇の背負ったものとそれに対する毅然とした態度に大きく心を動かされた。とても自分のような人間じゃ賄いきれない状況に立ち向かう昭和天皇の姿に感動した。

とにかく、この作品に登場する全ての人物に敬意を払うし、あの難局をよくぞ乗り切ったと尊敬し、感動する。
きっとこれを読むか読まないかで「8月15日」の意味が変わるであろうし、玉音放送の受け取り方も変わるであろう。

日本の歴史をどのような立場で見るにせよ、いまの日本のスタート地点となった「終戦」を理解するには最上の一冊だと思う。
おそらく「終戦」を描く作品はこれ以上のものが出ないんじゃないだろうか。

人生のどこかの時点で一度は読むべき作品じゃないかな。

ところで、この作品の感想とは関係ないと言えば関係ないんだけど、「【自作再訪】半藤一利さん「日本のいちばん長い日」 歴史の「ウソ」常識で判断(1/4ページ) - 産経ニュース」という記事に出てくるこの部分。

 「決定版」で、いくつか重要な記述を修正しました。取材を尽くし、押さえるべき部分は押さえたつもりですが、完璧ではない。というのも、この本が舞台化された際、宮城事件に加わった元将校らが公演に招かれていて「今度も出なくてよかった」「出ないよアレは、永久に」と話していたのを聞きとがめ、追及するとはぐらかされたことがありましたから。どうも、まだ何か陸軍関係で明らかになっていない話がある。今となっては聞きようもないし、新資料も出てこないでしょう。そういう意味で、後世の人がもう一度こういう本を書くのは無理だと思いますね。

http://www.sankei.com/life/news/140526/lif1405260021-n3.html

これが気になって仕方がない。

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