関ヶ原の戦いの一面をスリリングに切り取った一冊「関ヶ原 島津退き口」

関ヶ原 島津退き口 学研新書

「島津退き口」という言葉でピンと来る人には言わずもがなで説明不要なんだけど、知らない人のために説明しとくと、「島津退き口」とは西軍に属した島津義弘を大将とする薩摩の島津家が1,000人ばかりの兵を率いて関ヶ原の合戦に参加したんだけど、合戦中は100発の鉄砲も撃たずにじっと動かないまま、合戦が終わり西軍の負けと決まったところで普通なら降伏するか寝返るか敵に背を向けて退却するところを何を思ったか目の前にいる東軍(約80,000人)に向かって退却、つまり敵中突破し血路を開いて敵味方ともに甚大な被害を出しながら薩摩まで逃げ帰り、薩摩にたどり着いた時には僅か80人ばかりになっていた、という日本史でも希に見る事件のひとつなわけです。

で、その「島津退き口」を一級の資料を基に当時の豊臣政権における島津家の位置や薩摩国内での島津義弘の位置、関ヶ原の戦い前後の状況それに至る経緯、合戦での布陣、敵中突破した後の経路などを丁寧に掘り下げ、「島津退き口」を詳細にスリリングに解説した書籍で一気に読んでしまいました。

本当は去年買ったまま読んでなかった書籍なんだけど、もっと早く読めば良かったと非常に後悔。

僕はこれまで「島津退き口」ということを知ってはいたけれど、島津義弘をはじめとする薩摩兵の剽悍さというか不気味さというか、日本史における薩摩隼人と呼ばれる人達の異人種のような輝きの面の印象が強かったんだけど、「島津退き口」を切り口としてこれまでとはちょっと違う理解の仕方ができたような気がします。

個人的には「島津退き口」後の島津家と徳川家との剛柔併せ持った外交戦略の部分ももっと詳細に解説して欲しいと思ったんだけど、いや、この書籍に書かれていることだけでも充分に面白かったなとも思います。

関ヶ原の戦いを石田三成や徳川家康の視点から描いたり、当時の政権中枢の状況から切り取った書籍は多いんだけど、この本のような目線で関ヶ原を見つめるということは非常に新鮮だし、また世に名高い「島津退き口」をここまで詳しく扱った書籍というのは他にないんじゃないかなと思います。
とにかく面白く読むことが出来た一冊。

大河ドラマや歴史小説がきっかけで「関ヶ原」に興味を持った人にもお勧め。
ただし、これを読む前に出来れば島津義弘という人物についてある程度の知識は持っておいた方が良いかもな、とは思います。

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